シェルコードバンとは?

積み重ねられたコードバン

シェルコードバン=なんとなく高級そうなもの、という漠然としたイメージだけ持っていませんか?

そもそもシェルコードバンとは何なのか、こちらでわかりやすくご説明します。

 

コードバンとは馬のお尻の革である

ひとことで言うと、コードバンとは 馬のお尻の部分の革を指します。

馬のお尻、ちょうど「片尻」の部分にそれぞれシェル層と呼ばれる部位があります。

馬のこの部分は他の動物と比較しても抜きん出て繊維が密に詰まっており、そのため非常に丈夫な革ができあがります。

今ではファッション用途で使用されることがほとんどですが、20世紀初頭までは主にカミソリの刃を研ぐためにコードバンが広く使われていました。

子供が6年間使い続けるランドセルにコードバンが使われるのも、その堅牢さを買われてのことなのです。

  

馬の原皮

 馬の原皮。この中にコードバンが眠っている。

 

 

なぜ”シェルコードバン”というの? 

コードバンの語源については諸説あるようですが、最も有力視されているものが、スペインのコルドバ地方で最初に開発されたから、というもの。

そもそも、「シェルコードバン」はコードバンのタンナーとして最も有名であるアメリカのホーウィン社の商品名、と勘違いしている方も多いのですが、これは誤りで、あくまで一般的な名称です。

(現にホーウィン社もSHELL CORDOVANで商標登録はしていません。)

日本語では単に「コードバン」と呼ばれることが多いのですが、英語では「シェルコードバン」またはそれを略して「コードバン」と呼ばれます。

それでは、シェルコードバンの「シェル」とは何を指すのでしょうか?

「シェル」とは、英語で“殻”を意味し、貝殻や卵の殻も「シェル」です。

前述の通り、コードバンは馬のお尻の筋繊維が非常に密になった層から作られますが、馬の革から殻のように現れるこの強固な層のことを、「シェル」と呼ぶのです。

このシェル層を利用して作られた革が、シェルコードバンです。

 

馬のクラッタクラスト

 なめされた馬の革のバット(お尻)部分。

ここからコードバンを削り出していく。

 

 

コードバンはなぜ高いのか? 

コードバンは革の宝石と呼ばれることもあるほど、高級な材料とされています。

一般的に革の単価は1デシ(10cm x 10cm)単位で販売されます。顔料仕上げの牛革などは安いものだと1デシ40円~50円といったものもありますが、コードバンの単価は国産・インポートものに関わらず、その10倍以上。そもそもコードバンはなぜそんなに高いのでしょうか?

 一番の理由としては、その「希少性」が挙げられます。一部のエキゾチックレザー等を除いて、革は基本的に食肉の副産物として流通しています。コードバンは馬革・馬原皮から採取され、馬原皮は馬肉の副産物ですので、その基本的な流通構造は同じです。ただ、食肉人口が世界的に多い牛肉、豚肉、羊肉等と比較すると、馬肉を食す地域は圧倒的に限られます。特にアメリカやイギリス、オーストラリア等の国では、馬の愛好家も多く、馬肉はタブー視されているほどです。(多くの日本人が犬肉に嫌悪感を示すのと同じです)そのため、馬肉の流通量、すなわちコードバンの材料となる馬原皮の流通量も少ないため、牛などの一般的な革と比べるとどうしても高くなります。

また、コードバンというのは馬原皮から必ず取れるわけではありません。個体差が大きく、ものによってはコードバン層がない個体や、あっても非常に小さく売り物にならない個体も存在します。

さらに、次項で説明するようにコードバンの生産自体が非常に時間がかかる工程が多く、またオートメーション化が難しい「熟練の手」が必要な作業が多く発生します。

このように、そもそもの原料の希少性に加えて生産工程の手間の多さが、コードバンが非常に高価になる原因です。しかし、単に珍しいから高いというわけではなく、幾多の工程を経てようやく「コードバン」として完成された革は、他のどの革とも似て非なる仕上がりとなり、世界中のユーザーを魅了しているのです。